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Guest:株式会社NASU 前田高志氏
「ライブエンターテインメント」x「デザイン」で描く未来【前編】
スポーツやライブエンターテインメントを楽しむ環境をアップデートしていくことで、よりよい社会づくりに取り組むCHEERPHONE(チアホン)のメンバーが、スポーツやエンターテイメント業界を中心にさまざまなイノベーターやリーダーの方々とのインタビューや共創型セッションを通じて新しいアイデアや未来について語り合う「CHEERTALK」の第5回目は、CHEERPHONEの新しいロゴやグラフィックデザインを担当していただいた株式会社NASUの代表で、デザイナーの前田高志さんに、デザインの視点からのスポーツやエンターテイメントの未来をテーマにお話を伺います。
左から:持田(CHEERPHONE)、株式会社NASU 前田高志氏、木村(CHEERPHONE)
木村:前田さん、よろしくお願いします。
本日はライブエンターテインメントとデザインでの新しい未来づくりというテーマでお話が出来ればと思います。まずは前田さんの自己紹介をお願い致します。
前田:よろしくお願いします。グラフィックデザイナーの前田高志です。大阪芸術大学卒業後、任天堂に入社し、ゲームの制作ではなく、宣伝部門でのグラフィックデザインを15年ぐらい担当し、家族の病気などがきっかけで会社を退職し、介護などをしながらフリーランスとして2年ぐらい活動しました。
その後、株式会社「NASU」を立ち上げ、「BreakingDown」の様なエンターテインメントのグラフィックだけでなく、固い企業の課題をデザインで解決するなどさまざまなジャンルや領域で活動をしています。
実は最初の就職活動ではパナソニックも受けていたのですが、最終面接で落ちちゃいました・・・笑
木村:え、そうなんですね。改めてご一緒できるのも何か縁ですね。笑
前田さんには、CHEERPHONEの新しいロゴやグラフィックデザインを担当いただきました。
2024年7月に発売された新刊『愛されるデザイン』(幻冬舎)にもその経緯などを掲載いただいており、ありがとうございます。改めて、新書の発売おめでとうございます。
前田高志氏新著「愛されるデザイン」
前田:ありがとうございます。
木村:まず、この書籍の話から入りますが、多くの実例が紹介されるこの書籍で特に思い入れのある事例はありますか?
前田:どれも思い入れがあるので選ぶのは難しいですけど、「おだいじに薬局」のデザインは定期的にバズるので、お客様からも喜ばれている反応は大きいですね。
木村:私もあのデザイン、可愛いので好きです。
あとは、書籍で触れられていた「BreakingDown」のクリエイティブデザインが毎回違うものが用意されていたのも驚きでした。
前田:これまでの総合格闘技大会のグラフィックは大体同じようなビジュアルがほとんでした。これまでの格闘技を見なかった人にも見てもらいたい。格闘技のこれまでを壊したいというのが「BreakingDown」です。また「BreakingDown」では成長や発展を牽引するような意味で、運営するスタッフや出場する格闘家のためのインナーブランディングとしての意味をグラフィックに込めているんですよ。
木村:細部へのこだわりが感じられて、面白いなと思いました。
この書籍全体的を通して前田さんのおススメポイントを教えてください。
前田:デザインの基本や考え方が分かると思うので、ビジネスパーソンの人などがデザイナーよりデザインのことが分かるようになる本かもしれません。デザインというのは全ての基本なので、生活や仕事で役に立つことがあると思いますし、これからもっとAIが発達すると、自分でものを作るような機会が増え、誰でもクリエイターになれる時代が来たときにも役に立つと思うんです。
木村:デザインに関わる人にもそうでない人にも、書籍で紹介されているフレームワークを活用してもらえるということですよね?
前田:そうですね。普段の日常にやっていることでもこれを読むことで新鮮な発見があるかもしれないですね。
持田:書籍で紹介されているスタバのロゴの話は普通にしていると気づかないですが、あれ以来いろいろなロゴなどへの見方が変わりました。
「愛されるデザイン」より
前田:デザインナーの目を移植するって書いているのはそういうことなんですよ。
持田:デザインを民主化するような本だなと思いました。
前田:まさにそれが狙いです。
木村:この書籍にCHEERPHONEの新しいロゴデザインについて紹介いただきましたが、CHEERPHONEのロゴを新しくリニューアルしてみていかがでしたか?
前田:ここ数年での会心の出来です。笑
リニューアルされたCHEERPHONEのロゴ
木村:良かったです。笑 苦労などはありましたか?
前田:最初はどう進めて行こうかなと言うのはありましたが、CHEERPHONEの活動の状況や想いを聞いているうちに、良いサービスなのでもっと知られたいなと僕の中でも勝手に盛り上がってきて、ただ、カッコいいロゴや造形的におしゃれなロゴを作るのではなく、認知を上げるために機能するロゴを作りたいと思うようになりました。ロゴだけじゃなくキャッチコピーなども提案したのは、もっと知られたいと思ったからです。
持田:最初は私たちからも特に具体的なイメージなども伝えておらず、非常に抽象度が高い依頼をさせていただいたので、よくゴールまでたどり着きましたよね。笑
前田:途中で僕のマインドが変わったので、最後の方はCHEERPHONEのサービスが爆発するのはコレだろうって感じで提案していました。
木村:おかげで良いデザインに辿り着けました。
では、前田さんが、さまざまなデザインの仕事を進める中でのモットーや大切にしているものはありますか?
前田:僕がよくプロの条件として言っているのは、「良い仕事を確実にデザインすること」です。
どんなプロジェクトでも多くの意見を聞いて、いろいろな可能性を試していくことで、あとで振り返った時に後悔しないようにしたいんですよね。
木村:ありとあらゆるパターンをできる限り考えつくすってことですか?
前田:そうですね。出来る限りです。だから、CHEERPHONEにも全く後悔はないです。
どんな仕事でもグラデーション検証と言って、少しずつデザインを変えていったり、細部のデザインや文字間隔なども含めあらゆる可能性も探っていきます。
持田:いままでいろいろなデザイナーさんと一緒に仕事をする機会がありましたけど、可能性の探索や細部へのこだわりが一番強い人だなと思いました。まさに職人だなと。
前田:あとで、お客様からやっぱりこっちが良かったって言われたくないんですよね。
すべての可能性を試して、答えに導くのがプロなんじゃないかなと思うんです。
木村:プロ意識ですね。改めて、仕事のアウトプットに対しての“前田さんらしさ”や“NASUらしさ”のアイデンティティはどこにあるのでしょうか?
前田:それは僕の判断軸にあると思います。それが面白さやユニークさになっていると思います。
CHEERPHONEのロゴも普通に考えたらこうはならないと思うんですよね。カッコよくて洗練されたものになりがちだと思うんですよ。でも、デザインの背骨をしっかりと踏まえた上で、そこに夢やパッションを乗せて行くと普通の延長じゃだめだってなり、こういう遊びの要素も入ってくるんです。これはAIじゃできなくて、僕たちデザイナーだからこそ出来るんですよね。
持田:このロゴデザインに辿り着くまでに、前田さんにいくつもの可能性を提案してもらって、多くのコミュニケーションを重ねましたよね。そのプロセスも楽しめましたし、結果にも納得しかないです。
このロゴを使うことができるは私たちだけだと思っています。
木村:前田さんはこれまでいろいろなデザインをされてきて、未来に向けて、こういうところまでデザインをやりたいという目標などはありますか?
前田:そうですね。僕は「デザインをお茶の間に」って言ってるんですけど、生活していると悩んだりすることもあると思うんですけど、そういうのもデザインのチカラで解決できると思っているし、そもそも悩むことすらなくなるんじゃないかと思うんですよ。ロゴを考える時もそうするように、いろんな可能性を探って、その中から最適解を選ぶというデザインの考え方やプロセスがお茶の間レベルにあればいいなと思ってます。
昔は家庭の医学が一家に一冊あったと思うんですけど、そんな感じでデザインの考え方の本が家庭にあればいいなと思ってこの本も書いてます。デザインは高尚に行くのではなく、もっと大衆にしたいんですよね。
木村:いいですね。デザインと言うと構えてしまいがちですが、仕事の面でも生活においてもデザイン的な考え方が広がると良いですね。
持田:最後に、前田さんが将来デザインしたいものは何でしょうか?
前田:それ結構聞かれるんですけど、困るんですよね。笑
でも、今パッと浮かんだのは幼稚園ですね。建物や空間を作ってみたいなと。
持田:コミュニティってことですか?
前田:そうそう、そうですね。建物として残るものだったり、人が関わっていくものがやってみたいですね。
グラフィックって人が関わらなくても成立することが多いですけど、それが強みでもあり弱点でもある。
でも、建物って人が必ず関わるから面白いだろうなって思います。
持田:その時は是非、パナソニックの設備を使ってください。笑
前田:いいですね。笑
木村:では、一旦、前半はここまでということで、前田さんの夢の実現の際はご一緒できればと思います。
引き続き、後編でお話を伺います。
【前田高志氏プロフィール】
1977年兵庫県生まれのデザイナーであり、クリエイティブディレクター。大阪芸術大学デザイン学科を卒業後、任天堂で14年半にわたりデザイナーとして勤務。任天堂退社後に「デザインの力を伝える」ことを使命とし、株式会社NASUを設立し、クリエイターコミュニティ「マエデ(前田デザイン室)」を運営。
現在、前田さんはデザインやクリエイティブディレクションの分野で活躍し続けており、デザインの力を多くの人に伝えるために積極的に活動しています。
著書:『勝てるデザイン』『鬼フィードバック』『愛されるデザイン』『デザイナーが最初の3年間に身につけるチカラ』
株式会社NASU
社名は「為せば成る」に由来。デザインとは「成す」こと。企業の本質を伝えビジネスを成功に導くデザイン会社です。
表層的で好みに左右されてしまいがちな「おしゃれ」「かっこいい」だけではなく、あらゆる層にリーチし、思わず手に取りたくなる、遊び心あるデザインをご提供します。
独自のヒアリング・コンセプトワークを通して事業戦略の元となる「コンセプト」「タグライン」、デザインジャッジの基準となる「デザインのものさし」を策定。
経営者や企業の思想を「美しさと遊び心」が融合した、確実に機能し続けるデザインにします。
デザインの納品は終わりではなく、はじまりのつもりで日々のデザイン運用にもコミットすることで、お客様のビジネスの成功まで伴走します。
コミュニティやSNSを活かして制作過程を公開し、広く知ってもらう発信力も強みにして、デザインを完成させてまいります。
CHEERPHONEについての問い合わせ先 - cheerphone@ml.jp.panasonic.com
CHEERPHONE HP - https://www.cheerphone.jp/